長崎県佐世保の弁護士ブログ | 佐世保 長崎県北(平戸市・松浦市)を拠点とする弁護士(松尾茂利法律事務所)です。

松尾茂利法律事務所
故郷、佐世保の皆様に誠心誠意ご奉仕します。

Blog

2015年06月26日 [法律]

空き家対策特別措置法と行政代執行

先日いわゆる空き家対策特別措置法が施行されました。今回は同法第14条第9項に規定する行政代執行について解説いたします。まだ文献等見られない法律に関わるものなので、大きな間違いがあるかもしれないことをご了承下さい。まず下記の条文を参照しながら以下ご覧下さい。空き家対策特別措置法第14条はまずその第1項で「市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置の『助言と指導』ができる」とし、それでも駄目な場合には『勧告』できるとしています(第2項)。さらにそれでも駄目な場合には『命令』できるとしています(第3項)。この「命令」の存在が、行政代執行のいわば前提条件になります。それを示しているのが第9項で、「第三項の規定により必要な措置を命じた場合において、」というのがこのことを表しているわけです。さらに第3項は「行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。」としてその後を行政代執行法に託しているわけです。
その行政代執行法では第2条において「法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例含む。以下同じ。)により直接に命じられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。」としています。
つまり、同法では行政庁や第三者が代執行を行うためには、以下の要件を満たさなければならないとしています。
@命じた行為が「代替的作為義務」であること
A義務の不履行があること
B他の手段(事前に行政指導など)によって履行を確保するのが困難であること
Cその不履行を放置することが著しく公益に反すること

但し空き家対策特別措置法の法文の中に「行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、」と書いているのは上記BCの要件は不要とするものであると考えられます(土地収用法102条の2第2項と同じ発想)。しかしながら 私見では、行政代執行は、行政機関が司法機関の力を借りずに自ら強制力を発動できることから「行政の自力救済」と言われることもあるほどの強権発動であるから、事実上BCの要件を充足しない限りはその正当性を確保できないのではないかと思います。
しかしながら、この行政代執行はなかなか活用できていないということが指摘されています。その理由としては
@上記BCの要件は抽象的でかつハードルが高い要件であること
A行政代執行の実施及び実施後の動産等の保管に時間と費用がかかるケースが多いこと
B義務者から代執行費用を徴収することが困難なケースが多く、自治体が最終的に費用を負担しなければならない可能性が高いこと
C行政代執行には膨大な事務量と専門知識を要し、簡易迅速な手段とは言えないこと
D行政代執行は強権発動といえるものであるため、首長等がその実行に消極的になることが多い
と指摘されています。 
まだまだ克服すべき課題はありますが今回の空き家対策特別措置法の施行によって第1歩踏み出せたのは間違いないところだと思います。
                記
行政代執行法 第14条
(第1項)市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
(第2項)市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。
(第3項)市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。
・・・・・・・
(第9項)市町村長は、第三項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。



PageTop