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2015年07月29日 [法律]

社会福祉法人のガバナンスについて 理事会・評議員会

1 平成26年7月4日 厚生労働省の「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」において社会福祉法人のガバナンスの欠如が指摘されている。
しかし、かかるガバナンスの欠如を云々する前に根本的に再構築しなければならないことがあると思われる。それは社会福祉法人における事業執行の自律性とその裏腹となる責任体制の構築である。現在多くの社会福祉法人で採用されている定款例をこの事業執行の自律性と責任体制という観点から見る限り、社会福祉法人の経営者が自律的に業務運営を執行しその反面としてその自立的な業務運営者が適切に責任をとるべき体制がとられているかというと、現状全くそのような環境は与えられていないということができる。仮にそのような責任業務運営体制ができている社会福祉法人だとしたら、何らかの非常に幸運な事情が影響していると言うことになるはずである。まずこの自立的な業務運営体制とその反面である責任体制が構築されない限り、けん制機関である理事会によるチェックはただただ事業の運営の停滞を招くだけの、周囲から見れば理事長の足を引っ張ることを主な任務とする機関と評価される危険性が高くなってしまうのであり、これは一生懸命ご苦労されている熱心な理事にあまりに失礼な評価と言えよう。そこで本稿では社会福祉法人がガバナンスを回復するための方策のうちの一方策について検討してみたい。
2 モデル定款の問題点
現在社会福祉法人の理事会は過半数で決議するという多数決原則を採用する。すなわち、各種地方公共団体より提供されているモデル定款によれば「理事会の決議は過半数で決する」として理事会内部に多数者と少数者が存在するということを当然の前提として許容する条文を採用している。もちろん株式会社でいえば株主総会では多数派と少数派が存在し、その議決は多数決で決すると言うことが常態であるが、役員会(取締役会)では全員一致の原則を採用するのが通常である。ではどうして株式会社の役員会(取締役会)においては全員一致が原則とされているかというと、そうでなければ経営陣が一丸となって、且つ、意欲をもって事業運営ができないからである。例えば次の仮説例を考えてみる。ある会社の取締役会で多数決がとられていたとする。そしてある決議事項について、社長は反対だが、他の取締役の賛成多数であったためその決議が成立したとする。社長は取締役会の決議に従って嫌々ながらその決議事項を執行しなければならないわけだが熱意を持って業務執行できるだろうか。相当ねじれた状態であると言って良い。しかし現在のモデル定款はこのねじれた状態を許容しているのである。次に前述の仮説例で責任の所在の問題を考えてみる。すなわち、この社長が嫌々行った事業が失敗に終わった場合に誰が責任をとるべきなのであろうか。社長としては自分には責任はなくその会議で賛成していた役員に責任があると言うだろう。しかし賛成役員としては役員会の決議事項だから役員全員で責任を負うべきだと主張するだろう。ここではどちらの言い分が正しいかという点に深入りすることはしないが、少なくとも社長をはじめとする役員の責任の所在が不明瞭だと言う点では異論を見ないであろう。これと同じ問題が現在の社会福祉法人のモデル定款では現出することを許容しているのである。この責任体制を明確にしなければ、いくらガバナンスが重要だとして各種の方策を講じても何ら効果が上がらないのは当然の帰結であると思われる。以下後日に続く。


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