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2015年09月10日 [法律]

行政代執行における行政庁の裁量の限界

先日講話させていただいた空き家対策特別措置法においても行政代執行の手法が用いられており、昨今はこの行政
代執行という義務履行方法に注目が集まっている。長崎県の石木ダムの事案でもこの問題に突入する気配である。
そこで今回は過去行われた行政代執行において、裁判所が、行政の行き過ぎ(法律用語で言えば、崔庸健の逸脱・濫
用といいます)と判断した裁判例をご紹介しておきます。
第1 東京地方裁判所昭和48年9月10日
1 事案
  Xは、知事Yが管理する都市公園の土地上に建物等を所有し、同土地を許可を受けないで占用していた。このた
め、Xは、都市公園法に基づきYに対して公園敷地の使用許可を求めた。Yは許可することに好意的、積極的であ
ったが、ひとまず本件建物等 を撤去して本件土地をYへ返還することを前提としていたため、これに対する応
答を留保していた。
  ]が返還に応じなかったため、Yは建物等に対する除却命令を発した。
しかし、Xはこれを履行しなかったので、建物等の除却に関する代執行についての戒告を行い、代執行令書を]
に送達後、代執行を行った。
  これに対し、Xは許可申請をしていたのにYはこれに応答をしないまま本件除却命令を発したものであって、Xの
正当な権利を侵害するものであるから違法である等の主張を行い、除却命令、代執行命令等の各処分の取消しを
求めた。
 2 裁判所の判断
@ 行政代執行法2条に定める要件の存否についての判断は一応代執行を行う行政庁の裁量に委ねられている。
A しかし、代執行にかかる義務を課す法令ないしその義務を課す行政処分の根拠となる法令の趣旨・目的を
はなれた悪意的な観点から当該行政庁が代執行の実施を決定した場合には要件の存否についての行政庁の判断
が違法になる。
     
第2 福岡高等裁判所昭和55年5月29日
1 事案
  旧国鉄は、新幹線用地確保のため、日也収川法に基づき県収用委員会に対し旧国鉄新幹線小倉駅北口に土地及び
建物ビル敷地の 収用を申請し、明渡裁決を得た。しかし、所有者であったXが晰度義務を履行しなかったため、
知事Yは、ビル撤去の行政代執行 を行った。
  これに対して、Xは任意撤去の予定であったにもかかわらず撤去したYの代執行は違法であると主張し、その取
消しを求めた。 原判決は行政代執行法2条に定める要件に欠けるところはないとして、Xの請求を棄却した。こ
れに対しXは控訴した。
2 裁判所の判断
@行政代執行法2条所定の各要件を具備し、具体的に戒告等の手続がなされていても、代執行を行うか否か、ま
た、行う時期をいつにするかについては当該行政庁の裁量が認められる。
A しかし、義務者において任意に履行する意思と能力が客観的に認められる場合に、当該該行政庁があえて
行政代執行の手続を進めることは、義務者による任意履行を原則とする法の趣旨に反してその裁量権の濫用と
なり、右代執行手続が違法となる。

このように行政代執行に関し行政庁に裁量権があるとしても一定の限度があるというわけです。


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