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2016年03月24日 [法律]

いじめ対策要求に対する対応

いじめ対策要求に対する対応
簡単な説例を設定する。
【設問】生徒Aの母親Bから「自分の子供がいじめられているようだ。」との連絡があった。生徒Aの担 任Cは初耳であった。どう対応すべきか。


第1 はじめに
  1 いじめ問題が社会問題化して久しい。しかしいじめを原因とする悲しい事態はなかなか 収まりそうにないように見える。ところで説例のような問題は今やどの学校で起こって もおかしくない申出であろう。以前はこういう問題は教育関係者の判断に任せしておけ ば良いとする風潮が強く、我々法律関係者が関与することは非常に少なかったが、被害者 の生命にかかわる問題であること、また、非常に先鋭な交渉の場面になりうることから すれば、一つの紛争と言えるに十分なものであること等から、今日ではその解決のために 紛争解決の専門家たる弁護士の関与は避けて通れない状況であると思われる。
2 前置きはこれくらいにして早速設問の検討に入ろうと思うが、こういう申出に対してそ もそも学校に対応する義務があるのかどうかという初歩的問題から検討を始めておきた い。この点に関して大いに参考としなければならないのは平成25年9月から施行されてい る「いじめ防止対策推進法」である。この法律に【設問】の場合の対応について一定の 措置を学校に義務づけているのであれば、それが本設問への一応の回答となるわけである。 そこでまず同法に沿って検討していくこととする。
第2 いじめ防止対策推進法
1 同法では「いじめ」を「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍してい る等当該児童生徒と一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響 を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の 対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」(2条1項)と定義している。従 って【設問】の申出が、このいじめの定義に該当する可能性が認められるということで あれば(なおこの「いじめ」認定自体も教育者・学校関係者だけで行うのは危険である のは言うまでもない)、学校側はいわゆる「いじめ問題」として取り扱う必要があると いうことになる。
2 それでは現時点では「主張」としては「いじめ」の可能性は否定し得ないものとする。 そこで次には「事実」としての「いじめ」の存在をどうやって確認していくかの問題が 次の問題である。この点については前述の「いじめ防止対策推進法」では、「いじめの 防止等に関する施策、措置」として以下のことを定めている。

『1 学校の設置者及び学校が講ずべき基本的施策として(1)道徳教育等の充実、(2)早 期発見のための措置、(3)相談体制の整備、(4)インターネットを通じて行われる いじめに対する対策の推進を定めるとともに、国及び地方公共団体が講ずべき基本的施 策として(5)いじめの防止等の対策に従事する人材の確保等、(6)調査研究の推進、 (7)啓発活動について定めること。
2 学校は、いじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、複数の教職員、心理、 福祉等の専門家その他の関係者により構成される組織を置くこと。
3 個別のいじめに対して学校が講ずべき措置として(1)いじめの事実確認、(2)い じめを受けた児童生徒又はその保護者に対する支援、(3)いじめを行った児童生徒に対 する指導又はその保護者に対する助言について定めるとともに、いじめが犯罪行為とし て取り扱われるべきものであると認めるときの所轄警察署との連携について定めること。
4 懲戒、出席停止制度の適切な運用等その他いじめの防止等に関する措置を定めるこ と。』

3 そこで【設問】に即して答えると抽象的には上記3(1)〜(3)の措置を実施すべきで あるということになる。その実施のために上記2の組織を設置しておくべきということに なる。ところでまだ組織を設置していない学校も多いと思われるが、前述の通り「いじ め防止対策推進法」平成25年9月から施行されており、本日(平成27年3月)ではや1年6ヶ 月経過していることからすれば、かかる組織を未だ設置していないということはもはや それだけで対応不十分と評価されるのはやむを得ないといわざるを得ないのではないだ ろうか。上記措置は法律が要求する措置なのでありこの法律上の義務を果たしていない のであるから、これらの組織を設置しないでなお正当であるという法的論拠はなかなか見 いだしがたい。したがって今後は上記の措置を講じていなかったこと自体を理由に損害 賠償請求が求められる事案も出てくることとなろう。

4@そこでここからは上記の措置がとられたという前提で議論を進めることとならざるを得 ない。
 すなわち上記の措置の結果、「いじめ」を認定・認識できる場合に至った場合はもちろ ん、何らかの徴候があって予見しうる場合には、教員・学校関係者に被害を回避すべき具 体的義務が生じることとなり、反対に、事故発生が予見不可能ないわば突発的、偶発的 な事故と言えるものについては、教員・学校側の責任は否定されることになる。
Aそして注意すべきはこの予見可能性の判断というのは、平均的な教育専門家を基準にす ると言うことである。この平均的と言う言葉も説明を要するかもしれないが、おおよそ のイメージとしては文部科学省が想定している平均的な教員と言うほどの意味であると 考えて良いと思われる。そして具体的な担当教員の立場にその平均的な教育専門家を立 たせた上で予見可能かどうかを判断するのである。そしてその結果予感可能性ありとな れば、そのアナロジーとして予見義務が導かれ、担当の教員が予見できなかったとすれ ば予見義務違反となるわけである。さらに言えばこの予見義務が生じれば結果回避義務 が生じる。したがって教員・学校側の責任は注意義務違反ありやなしやと言う形で問題 となるが、厳密にはこの予見義務違反と結果回避義務違反とからなっているのである。
 Bこの予見義務や結果回避義務の内容はあらかじめ一律に定めることはできない。たとえ 判断主体の基準が平均的な教育専門家であっても、場所・時間・シチュエーション等の 付帯的な状況が異なれば、予見義務・結果回避義務の内容は異なってくる。この関係で いじめ関係の裁判例では「過去に当該学校においていじめの発生や紛争が生じたことが あったか、従来からの当該学校ないし教員の間でのいじめ問題への取り組み、指導、内 容等を総合的に判断し、これを踏まえて、いじめの態様、程度、当該児童生徒の能力、 心身の発達状況、年齢・性別・性格等の個別事情によって具体的な予見義務・結果回避 義務を措定する」こととなるのである。そしてこの裁判例は前述のいじめ防止対策推進 法施行以前の裁判であったから、先ほどの平均的な教育専門家の基準によれば、この法 律の内容については当然にクリアすべきものとして措定されるのは間違いないことがお わかりになろう。
Cそこで裁判所はいかなる予見義務・結果回避義務を導いているかについて裁判例の検討 を通じて解説したい(数件の判例を検討するつもりであったが、1件だけで相当大部にな ってしまったたため今回は1件だけの検討とする)。
第3 裁判例の検討
中野富士見中学校いじめ訴訟控訴審判決
(1) 本裁判は「葬式ごっこ」に教員も参加した事件としてマスコミにも取り上げられた事件 である。しかし、ここではいじめに対する教員・学校側の対応と責任と言う観点から検 討したいので、これに必要な事実関係を取り出してご説明する。そこで検討にあたって は@まず事後的に判明し認定できた事実関係を摘示し、その後にA教員・学校側の対応 状況に関する事実を摘示し、最後にB裁判所がこの教員等の対応について示した判断を お示しする。かなり長くなってしまうが、事実関係を省略するのでは本稿の趣旨(いじ めに対する具体的対応の検討)が失われてしまいかねないのでご容赦いただきたい。
@【事実関係(被害者名は太郎とする。)】
1 中野富士見中学校では、K及びJを中心とする本件グループの生徒らが第二学年第一学 期早々からグループ化し、学校内外で、喫煙、怠学、授業の抜け出し、授業妨害、教師 に対する反抗、弱い者いじめ等の問題行動を繰り返すようになったが、昭和六〇年九月 の第二学期以降その問題行動は急激に悪質となり、やがて三年生のグループとも連携し て授業の抜け出し、授業妨害、壁、扉等の損壊、教師に対する反抗、暴行、他の生徒ら への暴行等が更に頻発するようになった。そして、それらの問題行動を防止するため、 同年九月頃からは教師らが休憩時間や自らが授業を担当しない時間帯に廊下等の見回り をし、同年一一月からは保護者らの有志も授業時間中の廊下を巡回するなどの対策が採 られるという異常事態となったが、事態は一向に改善されず、太郎の自殺に至るまでの 間悪化の一途をたどっていた。このように本件グループの生徒らは、昭和六〇年九月頃 以降は単なる問題行動を繰り返すだけでなく、非行性を帯びた粗暴行動を反復するよう になり、しかも、急激にその非行性を深めるようになっていたものである。
2 太郎は第一学年までは格別の問題行動もなかったが、第二学年第一学期の昭和六〇年六 月頃から隣室に移住するTを通じて本件グループに取り込まれた形で本件グループの生 徒らと次第に深く交遊するようになり、特に同級生のY及びJらと共に授業の抜け出し をするようになった。
 しかし、太郎は小柄で体格、体力等の面でK、Jらに明らかに劣り、かつ、元来運動が 苦手で粗暴な面がなく、温和で気弱な方であったため、本件グループ内においても同等 の仲間としては扱われず、当初からK、J及びTら他のメンバーから使い走りとして子 分的に使役される立場であったが、第二学期になると、無理な要求をされても嫌な顔を せずに服従し、屈辱的で理不尽な仕打ちをされても無抵抗で、むしろおどけた振舞いで 応じたり、にやにや笑いを浮かべてこれを甘受している太郎に対する他のメンバーらの 使役は一層激しくなったのみならず、太郎を事あるごとにいじめの対象とするようにな ったものである。
 第二学期には、太郎を使い走りとして使役する際の要求も次第に増大して嗜虐的な色彩 を帯びるようになり、毎日買い出しをさせられて、時には一日五、六回にも及んだほか、 授業中にも行かされるようになり、マンションの八階ないし一〇階から再三階段を上が り下りして買物に行かされたり、登校・下校時には多い時には一度に五、六個もの鞄を 持たされるようになったのみならず、授業中の買い出しを教師に発見されて、K及び Jが教師から注意されると、太郎はそれを理由にK及びJから殴る蹴るの暴行を受け、 その後も、同年一一月頃にかけて同人らを中心とする本件グループの生徒らから暴行そ の他の仕打ちを繰り返されるようになった。
 そして、同年一二月になって太郎が本件グループの生徒らから離反しようとする態度を 示し、K、J、Tらの使役の要求に従わず、本件グループの生徒らを避けるようになる と、これに腹を立てた本件グループの生徒らから、激しい暴力、いやがらせを繰り返さ れるようになったものである。

A【教員・学校側の対応】
1 担任Fは、既に昭和六〇年七月初めまでの時点において、太郎が本件グループの生徒ら と行動を共にして授業の抜け出し、怠学、授業妨害等の問題行動に出るようになったこ とを認識しており、さらに、本件グループ内では太郎は子分的な立場にあり、早晩気の 弱い太郎が他のメンバーらからいじめの対象とされるおそれのあることを予見していた のである。そして、その後も昭和六一年一月三〇日までの間、担任F、校長N、教頭S らを含む中野富士見中学校の教師らは、本件グループ内において太郎が授業中にすら使 い走りをさせられ、あるいは、K、Jらから暴力の行使を含むいじめを受けていること を繰り返しそれぞれ目撃し、他の教師から連絡を受けるなどして認識していたばかりで なく、昭和六〇年一二月以降太郎が欠席を続け、登校しても隠れていたりすることも承 知していたのである。
2 一方、第二学年第一学期以降時を追うに従ってK、Jらの問題行動は次第に悪質化し暴 力的色彩をますます強めて、そのため同校内は異常事態となっていたが、中野富士見中 学校の教師らは、太郎の使い走りやいじめの被害を知ってもその実情を究明しようとも せず、加害者である生徒らに対しても場当たり的な注意をするにとどめ、その保護者ら に対しても遠慮がちな連絡、注意をする程度で終始していた。
3 そして、昭和六一年一月三〇日には、校内で傍若無人に太郎を探し回る本件グループの 生徒らに対して教師らは制止することもできず、毅然とした対応を示さなかったばかり か、本件グループの生徒らの仕打ちに対する恐怖を訴え、グループから離脱したいと述 べる太郎に対し、担任Fは「本件グループから抜けるのは、やくざの足抜けと同じよう に大変だ。」とか「転校という方法もある。」などと述べるに止まったのである。

B【裁判所の判断】
当時、生徒間のいじめの問題は公立小中学校における緊急課題とされてあらゆる機会に その重要性が強調されており、中野富士見中学校についても、いじめ問題の理解といじ めに対する指導の在り方等に関する各種資料が繰り返し多数配布され、いじめの問題を 主題とした教師研修会にも校長、教頭、教師らが繰り返し参加する等していたが、本件 いじめにおいて太郎の置かれていた状況はこれらの資料等で取り扱われていたいじめと 同質のものであり、しかも、中野富士見中学校の教師らは右のように早い時期から本件 いじめの実態を認識し得る手掛かりを豊富に得ていたのであるから、右各種の資料等で 強調されているとおり、適切な問題意識を持って事態に対処していれば、早期に本件い じめの実態を認識し得たものというべきである。そして、本件いじめは昭和六〇年一〇 月頃以降急激に悪質化しており、当時の状況は既に太郎の心身に対し大きな悪影響を生 ずるおそれが存したというべきであるから、中野富士見中学校の教師らが適切な対処を していれば、その当時においてそのような実態を認識し得たはずであるというべきであ るが、結局、同教師らは適切な問題意識をもって対処することを怠ったため、最後まで 本件いじめの実態を正しく把握し、教師全体が一体となって適切な指導を行い、保護者、 関係機関との連携、協力の下に本件いじめの防止のため適切な措置を講ずるということ ができず、かえって、葬式ごっこにおいては一部の教師らは太郎にはいじめ側に加担し ていると受け取られるような行為に加わり、また、太郎からの助けを求める訴えに対し ても、教師の側としては太郎の絶望感を軽減させるに足りるような対応を全くしなかっ たといってよい状況であって、その結果、太郎が昭和六〇年一〇月頃以降も悪質化した 本件いじめに長期間にわたってさらされ続け、深刻な肉体的、精神的苦痛を被ることを 防止することができなかったものであるから、中野富士見中学校の教員らには過失があ るというべきである。

(2) 太郎の自殺と教員らの過失の因果関係
  この問題は上記のように教員に過失行為が認められるとして太郎の自殺と言う点まで法的   な責任を負うのかという問題である。
   この点を判断するためには、まずそもそも上記のいじめと自殺との間に因果関係がある かという問題があり、それが肯定される場合に、教員らが自殺することを予見可能であ ったのかという2段の判断構造をとる。
@いじめと自殺との因果関係
太郎は、昭和六〇年九月の第二学年第二学期以降、K及びJらを中心とする本件グループ の他の生徒らからのいじめが次第に激しくなり、一〇月、一一月頃からは急激に悪質化 するようになるにつれ、いじめに耐えかねて次第に本件グループから離反、離脱する意 思を固めるようになり、同年一二月には本件グループから離反、離脱しようとする態度 を示すようになったが、それを理由に更に暴行を受けるなどし、教師らに助けを求めて も効果がないのみか、かえってそのことを理由に暴行を加えられるという悪循環の状況 となり、本件グループの他の生徒らのいじめから逃れるため欠席を繰り返すようになっ た。そして、登校しても学校内には安心していられる場がないため校内で隠れていると いう状態となり、第三学期が始まった昭和六一年一月八日以降も同月三〇日まで更に状 況が悪化し、集団的暴行やいじめを反復され、教師らからも、控訴人らからも実効のあ る助けの手が得られないという状況の下で絶望感を抱いて家出をし、結局、このような 閉塞状況から逃避する方法として自殺の道を選ぶに至ったものというべきである。
 もとより太郎の自殺の動機を直接知ることはできないが、本件いじめが太郎の自殺の原 因であることは明らかというべきであり、太郎が自殺に至ったについては学校側の対応 の不十分、家庭環境の不安定、控訴人らの保護能力の薄弱等の問題点も指摘できるにせ よ、少なくとも本件いじめが太郎の自殺の主たる原因であることは疑いを入れないとい うべきである。
このように判示していじめと自殺との因果関係を認めた。
A 教員らの予見可能性
太郎の家出直前の昭和六一年一月三〇日までの時点において、本件いじめによって太郎 が深刻な肉体的、精神的苦痛を受けていたことも、中野富士見中学校の教師らが適切な 対応をしていればそのことを認識し得たと考えられることも前記のとおりであるが、本 件いじめの内容を前提としても、いじめを受けた者がそのために自殺するということが 通常の事であるとはいい難いところであるし、担任Fにおいて右一月三〇日の太郎の言 動や素振りからは自殺の可能性をうかがわせるような特段の印象を受けておらず、同日 夜両親らと話し合った際も太郎は「おれには何もこわいものなんかない。明日から頑張 るから心配いらないよ。」と述べており、両親らは同月三一日太郎が家出した後も、最 後まで太郎が自殺することを予想していなかったのである。太郎が同年一月三一日朝に 家出をして翌二月一日夜自殺するまでの約三七時間の行動は全く不明であり、太郎がい つ自殺を決意したのかも不明であるが、右のような太郎の言動等からすると、同年一月 三〇日の段階では太郎自身自殺を決意していなかった可能性もあるというべきであり、 また、他に中野富士見中学校の教師らに同月三〇日までの時点で太郎の自殺についての 予見可能性があったと認めるに足りる証拠はない。
このように判示している。但し、本事案は昭和に起こった事案である。その後ある程 度のいじめがあった場合に被害者が自殺することは数多く報告されている。そうすると 少なくともある程度の強度のあるいじめがあった場合に被害者が自殺することは通常あ り得る事態であると言うことが言えるので債務不履行構成で検討する限り「特別な事情 による特別損害」とはならなくなってきているのではないかと考える(この点は申し訳 ないが説明を省略させていただく)。ましてや今般の債権法改正においてはそもそも帰 責性の要件を不要とする方向なので、「予見できなかった」という弁解はできなくなる 方向にある。

(3)裁判所の判示の要旨
以上の結果裁判所は教員ら(正確には教員らが所属している中野区と言うことになる)に対   し以下のような判示をした(要旨)。
1 区立中学校において生徒が自殺した事件につき、同中学校の担当教員には、いじめの防 止のため適切な対処をしなかった過失がある。
2 右事件につき、担当教師には、被害生徒が自殺することについての予見可能性はない。
3 区立中学校において生徒が自殺した事件につき、学校にはいじめの防止のための監督義 務を怠った過失はあるが、被害生徒の自殺することについての予見可能性はないとして、 自殺したことによる損害を除いた肉体的、精神的損害について賠償責任を負い、100 0万円が相当である。

第3 最後に
    以上が本裁判例を通じたいじめに対する教員・学校側の対応の詳細な検討である。本件 でどうすべきだったかについては筆者が教育専門家でもないことから、直ちに述べるこ とはできない。しかしながら、冒頭に紹介した学校が講ずべき具体的基本的施策を着実 に実施しているときにはかかる悲劇が起こる可能性は相当に低減するものと解される。 重複になるが改めて記しておきたい。
   
『1 学校の設置者及び学校が講ずべき基本的施策として(1)道徳教育等の充実、(2)早 期発見のための措置、(3)相談体制の整備、(4)インターネットを通じて行われる いじめに対する対策の推進を定めるとともに、国及び地方公共団体が講ずべき基本的施 策として(5)いじめの防止等の対策に従事する人材の確保等、(6)調査研究の推進、 (7)啓発活動について定めること。
2 学校は、いじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、複数の教職員、心理、 福祉等の専門家その他の関係者により構成される組織を置くこと。
3 個別のいじめに対して学校が講ずべき措置として(1)いじめの事実確認、(2)い じめを受けた児童生徒又はその保護者に対する支援、(3)いじめを行った児童生徒に対 する指導又はその保護者に対する助言について定めるとともに、いじめが犯罪行為とし て取り扱われるべきものであると認めるときの所轄警察署との連携について定めること。
4 懲戒、出席停止制度の適切な運用等その他いじめの防止等に関する措置を定めるこ と。』
   
以上
 相変わらずテキストエディタの処理が下手くそで申し訳ありません。


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