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2020年03月06日 [法律]

「なんで学校の勉強を頑張らないといけないの」と言う疑問への回答

1  令和2年3月3日深夜に放送された『お願い!ランキング』(テレビ朝日系)
で、お笑いコンビ・メイプル超合金のカズレーザーさんが出演し、高校生に対し、
勉強の必要性について「(勉強するかしないかの選択は)どちらが良い、悪いで
はない」と前置きしたうえで、「勉強ができないと就けない仕事もいっぱいあ
る」「勉強できたほうが(仕事の)選択肢が増えるからね」と語ったそうです。
筆者もまさにこれに賛同し現実的な意見であり正鵠を得ていると思います。そこ
で本稿では就職と勉強がどう関係するのかと言うことについてそのメカニズムを
明らかにしようと思います。
2 日本型雇用システムと言われるものが現在の日本にも根強く残っていますが、
その特徴は論者によって様々なところ@終身雇用とA年功序列賃金は間違いなく
重要な特徴であります(但し後者は最近変容している)。
その日本型雇用システムを採用する目的ないし発想は、各企業独自の技術やノウ
ハウを一つの世代から次の世代に伝達するために、企業組織の中核的労働力を、
企業外の労働市場(外部労働市場)から調達するのではなく、企業内で育成・活
用・調整しようということにあります。
3 こういう目的・発想が具体的にはどういう現象として現れるかというと
@終身雇用制・・・自分から退職を申し出ない限り、入社時から定年に至るまでの
長期雇用関係を前提とする。なおこういう終身雇用制が適用される従業員とは、
期間の定めのない(無期雇用といいます)フルタイム雇用契約で採用される従業
員となります。これをいわゆる正社員と言います。なお終身雇用を解雇されない
という方向から裏付ける法制度として厳格な解雇制限が労働基準法に定められて
います。
A教育訓練・・・長期雇用関係の中で、正社員のキャリアの各段階において系統的
にOJT(on the job training)を中心とした教育訓練を行います。
B定期的に職務内容や勤務場所を変える人事異動を行い、企業人としての豊富な経
験を積ませます。
Cこれらの教育と経験の積み重ねにより企業組織内の地位が上がり賃金が上昇しま
す。
Dこのようなキャリアの発展のなかで、やがて上級管理職への競争過程に入り、さ
らに役員登用され、経営者になっていくことになります。
4 そうすると、こういった人材の企業への入り口である採用は次のようにならざる
をえないわけです。すなわち当該人材の具体的な職務についての遂行能力を重視
するのではなく、その人材の地頭(じあたま)(物事の理解力等)の良さ・学習習
慣・社会性・性格の良さや真面目さ等の潜在的能力を重視した採用にならざるを
えないということです。しかしながら、かような潜在的能力を客観的にわかる人
などいません。そこで結局は「あの大学の学生出身者は評判が良いのであの大学
の人材ならば大丈夫であろう」「なかなかの成績なので勤勉であろう」というよ
うな学歴重視の傾向が採用においてどうしても現れるわけです。人事担当者の立
場からすれば、後日問題を起こした従業員がいたとして、「どうしてあんな人物
を採用したのか」と役員から問い詰められたときに、学歴・成績等からは特に問
題になるところは見つからなかったと言うことが言えれば当該人事担当者の潜在
的能力の判定としては十分だと言うことになるわけです。
  なお筆者は某大学の就職課の課長さんに「どういう学生が企業から人気がある
のですか」「やっぱり成績トップの子ですか」と聞いたところ「いいえ、成績ト
ップより学園祭のリーダーだったりする子が企業から人気があります」と言われ
ていた。そういうところに企業は潜在的能力を見いだしていたということになり
ます。
そういうことで現在でも新卒者(新規卒業予定者)の一括定期採用という日本
独特の就活イベントが起きるわけです。ちなみに企業は潜在的能力を重視すると
言うことから、新卒者(新規卒業予定者)でなければ企業にとって魅力が落ちる
と言う現象も同時に起こってきます。そこでこういう企業への就職を希望する限
りは新卒者という身分は重要な意味を持つのでその身分を保持すべきだと思われるの
です。
5 そこで勉強の話に戻りますが、こういう潜在的能力を客観的に表すものは学歴や
成績表等しかないわけです。そこでこういう学歴等を前提に潜在的能力を判定す
る企業に採用してもらうためには学校の勉強を頑張って評価を受けやすい大学に
進学して卒業しなければならないことになるわけです。そこでこういう大学に入
るためにも「勉強を頑張りなさい」と言うことになるわけです。
6 先ほどは民間企業のお話をしたが、この潜在的能力を最も重視した事業体として
お役所があります。公務員になるための試験を課していますがそれはあくまでも
その人の地頭(じあたま)(物事の理解力等)を判定する手段に過ぎずその人の職
務遂行能力や適正を判断するものではありません。採用された後に前述の終身雇
用制下の各施策を体験し役所の幹部への道を歩むことが予定されているのです。
そしてその頂点に霞が関の官僚システムがあり、その人材供給源としての東京大
学があると言うことになるわけです。
7 なお民間企業は従前はその全従業員を終身雇用制のもと採用していましたが、現
在では幹部候補生は従前の終身雇用システムで採用し、現場の工場の労働力はい
わゆる非正規従業員として採用するようになっています。いわば採用の二元化と
いうことになります。そうすると幹部候補生である正社員と(将来性とかは関係
のない)現在の労働力の補完に過ぎない非正規社員との格差は大きいものになら
ざるを得なくなるのは今までの話からして当然であるのはおわかりいただけるで
しょう。そしてこれがあまりに不均衡だと言う声に押されて安倍政権が同一労働
同一賃金という標語の下労働改革を行ったわけです。しかしながら筆者から言え
ば日本型雇用システムをどうするのかの議論をもっとしっかりしたうえでなけれ
ば最終的には実りのある改革にはならないと強く感じています。霞が関官僚のみ
この終身雇用制度に基づく育成システムが残して民間は平等にしなさいと言うの
ではとても国民の納得するところではないからです
以上




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